海外で働くということは在住で長期間勤務することだけではありません。20代であっても海外出張に同行できるチャンスは日に日に高まっていると思います。今回はそんな出張で予約しなければいけないホテル予約で最も安く手配できる可能性のある方法を旅行会社の視点から詳しくご紹介します。
筆者はマニラの旅行会社で勤務していますが、フィリピン国内で見るとマニラは最もビジネス出張が多い渡航先の1つとなっています。他にはセブ、ダバオ、バタンガス、スービック、クラークなどがありますがメトロ・マニラの中心地は他の都市と比べても圧倒的な発展を遂げています。
日本から出張でマニラにいらっしゃる方も近年非常に増えてきました。その影響もあってか、日系のチェーン店レストランも続々と進出してきています。以前「ココイチ」で非常に嬉しいサービスを受けたことを別記事で紹介しておりますのでこちらもご覧ください。
出張には当然予算が決まっていますので何処のホテルに泊まってもいいわけではありませんよね。大抵が1泊1室1万円前後のようです。この1万円の中でいかにお得なホテル摂るかが小さな楽しみになっている方も少なからずいらっしゃると思いますが、日本と異なり海外では相場感がわかりづらくなります。相場がわからないと1万円を支払ってもとんでもないホテルだったり、施設は悪くないもの立地が悪かったりすることがあります。海外出張で値段も抑えて、適切なホテルを取得するためのオススメの方法をご紹介したいと思います。今回は旅行会社のプロの観点から少し専門的な知識も交えていきます。ケーススタディーを盛り込みかなり詳細に書いていきます!
色々なホテル予約の方法がある中でどれを選択すればよいのか
現在海外旅行だけでなく、海外出張の際にも主流となってきたオンライン予約。以前は日本の旅行会社のカウンターに行かなければいけなかったのが、今は24時間インターネット回線さえ整っていれば支払いまで完了する時代になりました。とても便利です。
海外のホテルを予約する方法は現在大きく4つに分類できる
1 オンラインの旅行会社(Online Travel Agency)を通じて予約を取る
2 宿泊予定のホテルのサイトや電話で直接予約を取る
3 日本の旅行会社(カウンター・オンラインは問わず)で予約を取る
4 渡航国現地の旅行会社のサイトから予約を取る
1番のオンラインの旅行会社は「Expedia」「ホテルズドットコム
」などが代表的です。日本では明確な呼び名がなく「ネットで予約」といえばこれらの会社のサイトが思い浮かぶ事が多いと思いますが、旅行会社の括りで言えばこれらは「Online Travel Agency」通称「OTA」と呼ばれます。ホテルは通常自らのサイトで予約を受け付けています。そのレートは一般に公開されているため「パブリッシュレート(一般レート・Publish rate)」と呼ばれます。この料金は通常最も高いものであり、かつこれ以上高く販売している旅行会社は基本的にありません。
また、ホテルは旅行会社と契約を取り交わし販売を代行してもらっています。この際旅行会社の利益を確保するために、ホテルは旅行会社専用レートを発行しています。これが「コントラクテッドトレート(契約レート・Contracted rate)」と呼ばれるもので、パブリッシュレートよりも20%〜50%程度安くなっています。旅行会社は取得したコントラクテッドレートを利用し、かつパブリッシュレートより安い価格で料金を設定しホテルを販売することによってその差益を出しているわけです。日本の旅行会社は現地の旅行会社と提携を行い、「ホテルから取得したコントラクテッドレート+現地の旅行会社の利益分」のレートを利用して日本でパッケージなどを作成して旅行商品を販売していくことになります。
これらの仕組みをよく理解した上で、更に詳しい視点で損得+αの部分を見ていきましょう。
スポンサーリンク
OTAで予約する場合ダイナミックプライスであり安いとは限らない
前述の通り旅行会社はコントラクテッドレートを持っているため、通常よりも安い価格でホテルを予約することができます。そこに利益分を上乗せして販売するわけですが、OTAと現地にオフィスを置く旅行会社では、一般的にホテルから提供されるレートが異なっています。
これはそれぞれの旅行会社の性質を考えるとよく分かるのですが、OTAは24時間予約が入り、またそれに伴って24時間キャンセルも入ります。そのためホテル側からすればOTAの予約はいつ入ってくるかわからず、かついつキャンセルされるかもわからないという不安定さを持っています。
しかしながらOTAのビジネススタイルにおいて最も大きな利点は「旅行会社のスタッフと一言も離さず即時予約確定まで進むことができる」という部分でしょう。更に特殊なポイントとして、予約日が直近になるとニーズが高まるため料金が上がったり、はたまた事前に予約していたのに直前にサイトを見てみるともっと安くなっていた!なんてこともしばしばあります。
ホテルとOTAが適用している上下動のあるこのレートは「ダイナミックプライス」と呼ばれます。これは料金が変動することによってより多くの収益を得ることのできるOTA側と、変動によってより多くの宿泊客を獲得しようとするホテル側の利害関係の一致によるものです。ただし、ホテル側がOTAに提供しているレートはほとんど100%現地の旅行会社よりは高くなっています。そのため変動が起こり一見安い価格に見えたとしても、現地にオフィスを置く旅行会社はその下限よりも更によいレートをホテルから仕入れています。OTAで予約をする大きなメリットは圧倒的な速さと利便性ですが料金では現地の旅行会社には勝てないということになります。
また格式が高いホテルになればなるほど、OTAのでホテルを予約するとオーバーブックの対象にされる可能性が高まります。すこし極端ですがわかりやすい例を示しましょう。
該当の宿泊日程で残り1部屋の同じ部屋に対して、AgodaとExpediaのサイトから、異なる2人が同時に予約を取ったとしましょう。どちらにも確定の連絡が入ると思いますが、実際はどちらかがオーバーブックの対象になります。ホテルは通常稼働率100%を毎日目指している関係で、特にピークシーズンでは数部屋のキャンセルを見越して、部屋数に対し103%や105%などの予約を受け入れています。結果的にキャンセルが発生しこれが100%になれば大成功ですが、101%以上になってしまった場合、この1%の人は部屋がありませんので現実として泊まることができません。仮にオーバーブックが発生した場合、ホテル側の負担で他のホテルを取り1泊過ごしてもらったりするわけです。
この1%のオーバーブック対象者を誰にするのかという問題がホテル側としては発生しますが、現地の旅行会社と異なりOTAは即予約確定なので、ホテルに問い合わせて空きを確認してお客様に確定の連絡を出しているわけではありません。あくまでも自動で確定が行われている関係で、以上のような事例に該当するとOTAの予約はオーバーブックに該当してしまう可能性が高いわけです。対して現地の旅行会社は予約が入るとホテルにFAXやメールで予約を送信したり、電話で空き状況を確認したりします。この一手間が確実な予約確保に繋がり、旅行会社からしても安心して「確定」の連絡をお客様に流すことができるわけです。
このようにOTAは圧倒的な強みを持っている反面、現地の旅行会社が持つレートと比べるとやや高めに設定されおり、かつ稀にオーバーブックの対象となるという一長一短のサービスと考えることができるのです。ただし、持っている強みは非常に優れたものなので今後OTAの予約がもっと増えていくことは確実と考えられています。技術の進歩によってビジネスも激変していくわけですね。
ホテルの公式サイトはプロモがない限りは高い
前述の通りホテルのサイトに出ている料金は最も高く、かつこれ以上高い料金で販売している旅行会社はありません。この情報だけを見ると「ホテルのサイトから直接予約するメリットは全く無い」ということになってしまいますが、予約ができる以上そこにはメリットもあります。
ホテルが旅行会社に部屋の販売を代行してもらうということは、シンプルに言えば本来得ることのできるはずの利益を一部旅行会社に取られていることになります。ですからホテルとしては自分たちのサイトから直接入ってきた予約は最も大切にしなければいけません。このためオーバーブックの対象になることも非常に少ないと言えます。これがまず直接予約のメリットの1つです。更にホテル側は、自社のサイトで表示しているパブリッシュレートが最も高いことを知っていますから、そこに付加価値を出して集客を行います。具体例で説明してみます。
1泊1室10,000円のパブリッシュレートのホテルの部屋があるとします。ホテルのサイトで予約すればもちろんそのまま1万円支払う必要があります。そしてホテルは旅行会社に1泊1室6,500円のレートを出していたとします。この状況であれば、旅行会社は9,999円までの料金で部屋を販売すればホテルよりも優位性を持つことができますよね。しかし通常旅行会社はこれを8,000円〜8,500円で販売します。これには理由があり、ホテルが宿泊に特典をつけたり割引を設定する可能性があり、9,999円で販売していては簡単に料金で見た優位性が失われてしまうからです。
例えばホテルは10,000円で部屋を販売していますが、これにホテルへの直接予約の場合「1泊当たり2本ビールをサービス」「30分のマッサージサービス」などが付帯されてくると、実質的な値段は10,000円ではなくなります。旅行会社に出しているコントラクテッドレートでもホテル側には当然利益があるわけですから、10,000円で戦う必要はそもそもないわけです。仮にホテルへの直接予約が10,000円 − ビール2本 = 9,500円とすれば、旅行会社は付加価値がない分料金で勝負する必要がありますから、9,000円でも少し見劣りするでしょう。このため8,000円〜8,500円を販売価格として設定しているというわけです。
ホテルへの直接予約はオーバーブックなど宿泊上のリスクが回避できる可能性が高く安心感がある一方で、料金は高くなります。ただし特典などが出ている場合は自分にとってお得になることもありますから、ホテルのサイトをチェックしてからOTAや旅行会社経由での予約にするかどうか考えるという方法もあります。
日本の旅行会社を通じて予約するとケースによっては最安になる
仕組みの部分で少し触れたように、日本の旅行会社は現地の旅行会社と提携を行って「ホテルから取得したコントラクテッドレート+現地の旅行会社の利益分」の料金を使って、それに自社の利益を上乗せしてホテルや旅行パッケージを販売しています。これだけ見てみるととっても高いのでは?と感じてしまうかもしれませんが、日本の旅行会社ならではの仕組みで格安の旅行パッケージも作成されています。
先ほどの例をそのまま使って説明していきましょう。1泊1室1万円のホテルを現地の旅行会社が6,500円で仕入れたとします。これに利益分が上乗せされて7,500円で日本の旅行会社に料金を提供したとします。現地の旅行会社はホテルを自社サイトで直接販売もしていますが、それよりも良いレートを日本の旅行会社に提供することで契約を取得しています。ここまで見ると安いレートを持っている順から「現地の旅行会社が持つコントラクテッド」→「OTAが持つコントラクテッドレート(ダイナミックレート)」≒「日本の旅行会社が持つレート」→「ホテルのパブリッシュレート」ということになりますね。
この仕組みまでわかってくると日本の旅行会社の料金に対する優位性は高くなく、かつOTAと比べると手間がかかるデメリットもあり強みがなさそうに思えますが、日本の旅行会社の最も大きな強みはパッケージです。海外出張に行くには100%航空券の取得が必要になりますが、ホテルと同じように航空会社のサイトからチケットを取得すると、これは飛行機の「パブリッシュレート」になり最も高い料金になります。航空会社は一部の旅行会社と契約を取り交わしており、旅行パッケージ作成用のこれまた「コントラクテッドレート」で飛行機の座席を販売しています。つまり、日本の旅行会社で海外出張の手配をしてお得になるケースは「ホテル+航空券」のパッケージを購入することになります。また同じ事例を使って具体的に説明していきます。
ケーススタディー
1泊1室1万円のホテルを現地の旅行会社が6,500円で仕入れています。これに利益を上乗せし、7,500円で日本の旅行会社に料金を提供しています。現地の旅行会社は自社サイトでこのホテルを8,500円で販売しているとします。そして日本の旅行会社は航空会社から、通常往復60,000円の座席を53,000円で仕入れていたとしましょう。
この事例で出張が2泊の場合、整理すると以下のようなケースが考えられます。
① ホテルのサイトで直接予約を取り、航空券も自分で取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復60,000円=80,000円
② 現地旅行会社を使ってホテルを取得し、自分で航空券を取得した場合
ホテル8,500円×2泊+航空券往復60,000円=77,000円
③ 日本の旅行会社で丸ごとパッケージとして手配した場合
ホテル7,500円×2泊+航空券往復5,3000円=68,000円+日本の旅行会社の利益分
このように③の日本の旅行会社は②の組み合わせよりも総額を安く設定すれば料金的に強みを持つことができるようになります。この場合は大体74,000円程度でパッケージを販売することになると思います。これが旅行会社のビジネスの仕組みになっています。
このケーススタディーを見てみると「日本の旅行会社にパッケージで海外出張の依頼をを流すのが最も安い!」と言い切ることができそうが、またまたその限りではありません。最後に現地の旅行会社に直接ホテル手配依頼をするケースを見てみましょう。
現地の旅行会社にホテル予約を頼んで、最も安く海外出張を組み立てる
前のケーススタディーでは日本の旅行会社が料金面で圧倒的な優位性を持っていることがわかると思います。しかしながら最安を目指すには、実は現地の旅行会社でホテルを手配し、更に自分で航空券を取得する②のパターンを毎回まず考えると良いのです。それは何故でしょうか。
先に航空会社は旅行会社に通常より安いレートで航空券を卸していることをご紹介しました。これらの航空会社は日本の旅行会社のパッケージにある程度安心して組み込むことができる大手の航空会社に限られます。例えば日本-マニラの往復パッケージであればフィリピン航空・全日空・日本航空・デルタ航空・チャイナエアラインなどの大手航空会社がパッケージとして考えられると思います。そしてこれらの航空会社はサイトである程度値段のする料金を出しています。このチケットを自分で取るのであれば、日本の旅行会社に海外出張のパッケージ作成を依頼したほうが大抵の場合安くなります。
対して最近増えてきているLCC(格安航空会社・Low-Cost Carrier)は驚くほどの料金で予約が取れる場合があります。日本マニラ往復の場合、同じ経路でLCCのセブ・パシフィックやジェットスター・ジャパンなどが就航しており、これらの航空会社のサイトでは大手航空会社の料金より安い価格で航空券が販売されている他、しばしば劇的に安い航空券が販売されます。3ヶ月先の航空券ながらなんと往復1万円以下の料金が出てくることが不定期にあるので、インターネット上ではしばしば話題になるのです。ただLCCはサービスを小分けにして提供しているので、預け入れ荷物の積載量や食事の有無などで大手航空会社と比較すると劣る場合がありますが、料金を追求した場合は大抵の場合LCCのほうが安いといえます。
また、現地の旅行会社がホテルとのコントラクテッドレートでビジネスを展開しているうに、日本にも航空券を安く仕入れて販売することに特化したビジネスを行っている旅行会社は数多く存在します。有名なところでは「スカイスキャナー 」や「エアータウン
」などがあります。LCCのプロモーションで破格のチケットがとれなかったとしても、このような航空券専門の日本の旅行会社で往復チケットを購入して、現地の旅行会社でホテルを手配して組み合わせることによって、日程的にも出張の予定に合っており、かつ最安に近い手配が行えるということです。ただし航空券専門の旅行会社は、一般の旅行会社と比較した場合、パッケージを作っているわけではなく航空券にあくまでもに特化している関係で、発券数が流動的であるため仕入れ値は若干高くなります。
このような旅行の仕組みを丸ごと詳しく説明してきたところで、まとめのケーススタディーを見て最安の海外旅行の手配の結論を見てみましょう。
海外出張を組み立てるケーススタディーまとめ
条件
1 現地のホテル(以下A)が1泊1室10,000円で部屋を販売している
2 Aの10,000円の部屋を現地の旅行会社(以下B)が6,500円で仕入れている
3 Bは自社の利益を含み7,500円で日本の旅行会社(以下C)に料金を卸している
4 Bは自社でこのホテルを固定価格8,500円で販売している
5 大手航空会社(以下D)は自社サイトで往復60,000円の座席を販売している
6 CはDから航空券をを53,000円で仕入れている
7 航空券専門の日本の旅行会社(以下E)はDの航空券を55,000円で仕入れている
8 格安航空会社LCC(以下F)は自社でDと同じ航路を50,000円で販売している
9 Fは3ヶ月に1回、特定の時期で10,000円の格安航空券を販売する場合があ
10 オンラインホテル予約会社(OTA)はBよりも料金が高いので除外する
11 Cもホテルのみの手配を行っているがBよりも料金が高いので除外する
① Aでホテルを取り、Dで航空券を取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復60,000円=80,000円
② Aでホテルを取り、Eで航空券を取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復55,000円=75,000円
③ Aでホテルを取り、Fの通常価格で航空券を取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復50,000円=70,000円
④ Bでホテルを取り、Dで航空券を取得した場合
ホテル8,500円×2泊+航空券往復60,000円=77,000円
⑤ Bでホテルを取り、Eで航空券を取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復55,000円=75,000円
⑥ Bでホテルを取り、Fの通常価格で航空券を取得した場合
ホテル8,500円×2泊+航空券往復50,000円=67,000円
⑦ Cでホテル+航空券のパッケージを購入した場合
ホテル7,500円×2泊+航空券往復5,3000円=68,000円+日本の旅行会社の利益分
→③の料金との競合で推定73,000円〜74,000円
⑧ Aでホテルを取り、Fの格安料金でチケットを取得できた場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復10,000円=30,000円
⑨ Bでホテルを取り、Fの格安料金でチケットを取得できた場合
ホテル8,500円×2泊++航空券往復10,000円=27,000円
以上のように組み合わせと料金を整理することができました。
海外出張を最も安く手配する方法・結論
この結果から、結論として「海外出張で一番安くホテルを手配するための方法」は⑥の「現地の旅行会社のサイトでホテルを予約し、LCCのサイトで航空券を予約する」方法です。更に運が良ければ⑨の方法で更に格安に旅程を組み立てることができる可能性があります。
今後皆さんが海外出張でホテルや航空券の手配をする必要がある際には、まず⑥の方法をまず検討して、⑨の可能性も確認すると良いと思います!
ちなみに筆者はこのケーススタディーの中ではBに当たるマニラ現地の旅行会社で勤務しておりますので、マニラの出張でホテル手配が必要であればこちらのサイトもチェックしてみてください。
今回は旅行業界の仕組みの説明を通して、海外出張のホテルと航空券を最も安く組み立てる方法をご紹介しました。今後、各旅行会社などについても紹介していきたいと思いますのでお楽しみに!
スポンサーリンク
【関連記事】