海外で働くということは在住で長期間勤務することだけではありません。20代であっても海外出張に同行できるチャンスは日に日に高まっていると思います。そんな出張で必須となるホテル予約で最も安く手配できる可能性のある方法を旅行会社の視点から連載で詳しくご紹介。今回は第2回として、具体的なポイントを抑えていきましょう。
ホテルの公式サイトはプロモがない限りは高い
前述の通りホテルのサイトに出ている料金は最も高く、かつこれ以上高い料金で販売している旅行会社はありません。この情報だけを見ると「ホテルのサイトから直接予約するメリットは全く無い」ということになってしまいますが、予約ができる以上そこにはメリットもあります。
ホテルが旅行会社に部屋の販売を代行してもらうということは、シンプルに言えば本来得ることのできるはずの利益を一部旅行会社に取られていることになります。ですからホテルとしては自分たちのサイトから直接入ってきた予約は最も大切にしなければいけません。このためオーバーブックの対象になることも非常に少ないと言えます。これがまず直接予約のメリットの1つです。更にホテル側は、自社のサイトで表示しているパブリッシュレートが最も高いことを知っていますから、そこに付加価値を出して集客を行います。具体例で説明してみます。
1泊1室10,000円のパブリッシュレートのホテルの部屋があるとします。ホテルのサイトで予約すればもちろんそのまま1万円支払う必要があります。そしてホテルは旅行会社に1泊1室6,500円のレートを出していたとします。この状況であれば、旅行会社は9,999円までの料金で部屋を販売すればホテルよりも優位性を持つことができますよね。しかし通常旅行会社はこれを8,000円〜8,500円で販売します。これには理由があり、ホテルが宿泊に特典をつけたり割引を設定する可能性があり、9,999円で販売していては簡単に料金で見た優位性が失われてしまうからです。
例えばホテルは10,000円で部屋を販売していますが、これにホテルへの直接予約の場合「1泊当たり2本ビールをサービス」「30分のマッサージサービス」などが付帯されてくると、実質的な値段は10,000円ではなくなります。旅行会社に出しているコントラクテッドレートでもホテル側には当然利益があるわけですから、10,000円で戦う必要はそもそもないわけです。仮にホテルへの直接予約が10,000円 − ビール2本 = 9,500円とすれば、旅行会社は付加価値がない分料金で勝負する必要がありますから、9,000円でも少し見劣りするでしょう。このため8,000円〜8,500円を販売価格として設定しているというわけです。
ホテルへの直接予約はオーバーブックなど宿泊上のリスクが回避できる可能性が高く安心感がある一方で、料金は高くなります。ただし特典などが出ている場合は自分にとってお得になることもありますから、ホテルのサイトをチェックしてからOTAや旅行会社経由での予約にするかどうか考えるという方法もあります。
日本の旅行会社を通じて予約するとケースによっては最安になる
仕組みの部分で少し触れたように、日本の旅行会社は現地の旅行会社と提携を行って「ホテルから取得したコントラクテッドレート+現地の旅行会社の利益分」の料金を使って、それに自社の利益を上乗せしてホテルや旅行パッケージを販売しています。これだけ見てみるととっても高いのでは?と感じてしまうかもしれませんが、日本の旅行会社ならではの仕組みで格安の旅行パッケージも作成されています。
先ほどの例をそのまま使って説明していきましょう。1泊1室1万円のホテルを現地の旅行会社が6,500円で仕入れたとします。これに利益分が上乗せされて7,500円で日本の旅行会社に料金を提供したとします。現地の旅行会社はホテルを自社サイトで直接販売もしていますが、それよりも良いレートを日本の旅行会社に提供することで契約を取得しています。ここまで見ると安いレートを持っている順から「現地の旅行会社が持つコントラクテッド」→「OTAが持つコントラクテッドレート(ダイナミックレート)」≒「日本の旅行会社が持つレート」→「ホテルのパブリッシュレート」ということになりますね。
この仕組みまでわかってくると日本の旅行会社の料金に対する優位性は高くなく、かつOTAと比べると手間がかかるデメリットもあり強みがなさそうに思えますが、日本の旅行会社の最も大きな強みはパッケージです。海外出張に行くには100%航空券の取得が必要になりますが、ホテルと同じように航空会社のサイトからチケットを取得すると、これは飛行機の「パブリッシュレート」になり最も高い料金になります。航空会社は一部の旅行会社と契約を取り交わしており、旅行パッケージ作成用のこれまた「コントラクテッドレート」で飛行機の座席を販売しています。つまり、日本の旅行会社で海外出張の手配をしてお得になるケースは「ホテル+航空券」のパッケージを購入することになります。また同じ事例を使って具体的に説明していきます。
ケーススタディー
1泊1室1万円のホテルを現地の旅行会社が6,500円で仕入れています。これに利益を上乗せし、7,500円で日本の旅行会社に料金を提供しています。現地の旅行会社は自社サイトでこのホテルを8,500円で販売しているとします。そして日本の旅行会社は航空会社から、通常往復60,000円の座席を53,000円で仕入れていたとしましょう。
この事例で出張が2泊の場合、整理すると以下のようなケースが考えられます。
① ホテルのサイトで直接予約を取り、航空券も自分で取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復60,000円=80,000円
② 現地旅行会社を使ってホテルを取得し、自分で航空券を取得した場合
ホテル8,500円×2泊+航空券往復60,000円=77,000円
③ 日本の旅行会社で丸ごとパッケージとして手配した場合
ホテル7,500円×2泊+航空券往復5,3000円=68,000円+日本の旅行会社の利益分
このように③の日本の旅行会社は②の組み合わせよりも総額を安く設定すれば料金的に強みを持つことができるようになります。この場合は大体74,000円程度でパッケージを販売することになると思います。これが旅行会社のビジネスの仕組みになっています。
このケーススタディーを見てみると「日本の旅行会社にパッケージで海外出張の依頼をを流すのが最も安い!」と言い切ることができそうが、またまたその限りではありません。最後に現地の旅行会社に直接ホテル手配依頼をするケースを見てみましょう。
現地の旅行会社にホテル予約を頼んで、最も安く海外出張を組み立てる
前のケーススタディーでは日本の旅行会社が料金面で圧倒的な優位性を持っていることがわかると思います。しかしながら最安を目指すには、実は現地の旅行会社でホテルを手配し、更に自分で航空券を取得する②のパターンを毎回まず考えると良いのです。それは何故でしょうか。
先に航空会社は旅行会社に通常より安いレートで航空券を卸していることをご紹介しました。これらの航空会社は日本の旅行会社のパッケージにある程度安心して組み込むことができる大手の航空会社に限られます。例えば日本-マニラの往復パッケージであればフィリピン航空・全日空・日本航空・デルタ航空・チャイナエアラインなどの大手航空会社がパッケージとして考えられると思います。そしてこれらの航空会社はサイトである程度値段のする料金を出しています。このチケットを自分で取るのであれば、日本の旅行会社に海外出張のパッケージ作成を依頼したほうが大抵の場合安くなります。
対して最近増えてきているLCC(格安航空会社・Low-Cost Carrier)は驚くほどの料金で予約が取れる場合があります。日本マニラ往復の場合、同じ経路でLCCのセブ・パシフィックやジェットスター・ジャパンなどが就航しており、これらの航空会社のサイトでは大手航空会社の料金より安い価格で航空券が販売されている他、しばしば劇的に安い航空券が販売されます。3ヶ月先の航空券ながらなんと往復1万円以下の料金が出てくることが不定期にあるので、インターネット上ではしばしば話題になるのです。ただLCCはサービスを小分けにして提供しているので、預け入れ荷物の積載量や食事の有無などで大手航空会社と比較すると劣る場合がありますが、料金を追求した場合は大抵の場合LCCのほうが安いといえます。
また、現地の旅行会社がホテルとのコントラクテッドレートでビジネスを展開しているうに、日本にも航空券を安く仕入れて販売することに特化したビジネスを行っている旅行会社は数多く存在します。有名なところでは「スカイスキャナー 」や「エアータウン」などがあります。LCCのプロモーションで破格のチケットがとれなかったとしても、このような航空券専門の日本の旅行会社で往復チケットを購入して、現地の旅行会社でホテルを手配して組み合わせることによって、日程的にも出張の予定に合っており、かつ最安に近い手配が行えるということです。ただし航空券専門の旅行会社は、一般の旅行会社と比較した場合、パッケージを作っているわけではなく航空券にあくまでもに特化している関係で、発券数が流動的であるため仕入れ値は若干高くなります。
このような旅行の仕組みを丸ごと詳しく説明してきたところで、まとめのケーススタディーを見て最安の海外旅行の手配の結論を見てみましょう。
海外出張を組み立てるケーススタディーまとめ
条件
1 現地のホテル(以下A)が1泊1室10,000円で部屋を販売している
2 Aの10,000円の部屋を現地の旅行会社(以下B)が6,500円で仕入れている
3 Bは自社の利益を含み7,500円で日本の旅行会社(以下C)に料金を卸している
4 Bは自社でこのホテルを固定価格8,500円で販売している
5 大手航空会社(以下D)は自社サイトで往復60,000円の座席を販売している
6 CはDから航空券をを53,000円で仕入れている
7 航空券専門の日本の旅行会社(以下E)はDの航空券を55,000円で仕入れている
8 格安航空会社LCC(以下F)は自社でDと同じ航路を50,000円で販売している
9 Fは3ヶ月に1回、特定の時期で10,000円の格安航空券を販売する場合があ
10 オンラインホテル予約会社(OTA)はBよりも料金が高いので除外する
11 Cもホテルのみの手配を行っているがBよりも料金が高いので除外する
① Aでホテルを取り、Dで航空券を取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復60,000円=80,000円
② Aでホテルを取り、Eで航空券を取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復55,000円=75,000円
③ Aでホテルを取り、Fの通常価格で航空券を取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復50,000円=70,000円
④ Bでホテルを取り、Dで航空券を取得した場合
ホテル8,500円×2泊+航空券往復60,000円=77,000円
⑤ Bでホテルを取り、Eで航空券を取得した場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復55,000円=75,000円
⑥ Bでホテルを取り、Fの通常価格で航空券を取得した場合
ホテル8,500円×2泊+航空券往復50,000円=67,000円
⑦ Cでホテル+航空券のパッケージを購入した場合
ホテル7,500円×2泊+航空券往復5,3000円=68,000円+日本の旅行会社の利益分 →③の料金との競合で推定73,000円〜74,000円
⑧ Aでホテルを取り、Fの格安料金でチケットを取得できた場合
ホテル10,000円×2泊+航空券往復10,000円=30,000円
⑨ Bでホテルを取り、Fの格安料金でチケットを取得できた場合
ホテル8,500円×2泊++航空券往復10,000円=27,000円
以上のように組み合わせと料金を整理することができました。この結果から、結論として「海外出張で一番安くホテルを手配するための方法」は⑥の「現地の旅行会社のサイトでホテルを予約し、LCCのサイトで航空券を予約する」方法です。更に運が良ければ⑨の方法で更に格安に旅程を組み立てることができる可能性があります。
今後皆さんが海外出張でホテルや航空券の手配をする必要がある際には、まず⑥の方法をまず検討して、⑨の可能性も確認すると良いと思います!
ちなみに筆者はこのケーススタディーの中ではBに当たるマニラ現地の旅行会社で勤務しておりますので、マニラの出張でホテル手配が必要であれば筆者が勤務している旅行会社のサイトもチェックしてみてください。
今回は旅行業界の仕組みの説明を通して、海外出張のホテルと航空券を最も安く組み立てる方法をご紹介しました。海外旅行や出張は海外で働く簡単なアプローチ方法の一つですので、学んだ知識を活用してコストを抑えて現地で短い時間も楽しく過ごしてみてください。
記事元:20代の海外就職論!
(倉田拓人/Taku)